天井のない家に住む理由|平均天井高3m・リビング最高4.2mが、暮らしに何をもたらすか
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天井のない家に住むということ|平均天井高3m・リビング最高4.2mが、暮らしに何をもたらすか
家づくりの基礎知識

コージーベースの家には、お部屋に天井がありません。
正確に言えば、天井を作っていません。屋根の形がそのまま室内の形になっています。
数字を正確に書きます。
リビングの最高高さ:3.7m〜4.2m
家全体をならした平均:約3m
勾配天井なので、場所によって高さが変わります。いちばん高いところと低いところがあり、その平均が3mということです。
日本の一般的な住宅の天井高は、2.2mから2.4mほどです。 建築基準法が定める居室の最低高さは2.1m(建築基準法施行令第21条)ですから、多くの家はその少し上に収まっていることになります。
つまり私たちの家は、平均でも一般的な住宅より60cmほど高く、リビングの最も高いところでは1.5倍以上になります。
「天井が高い家」という表現は世の中にあふれています。2.6mや2.7mでも「高い」と言われます。 ただ、リビングで4mというのは、そういう次元の話ではありません。
この記事では、その高さが住む人に何をもたらすのかを、環境心理学と脳科学の研究を引きながら書きます。出典はすべて末尾に明記しました。
まず、数字で見てみます
20帖のリビング(約33㎡)で計算してみます。
一般的な家(2.4m) | 当社の平均(3.0m) | リビング最高部(4.2m) | |
空間の体積 | 約79㎥ | 約99㎥ | 約139㎥ |
2.4mとの差 | — | 約20㎥多い | 約60㎥多い |
勾配天井なので実際の体積はこの中間になりますが、同じ床面積でも、空気の量が大きく変わることがわかります。
床面積を広げるにはお金も土地も必要ですが、上に伸ばすぶんには土地は要りません。 そして人間の感覚は、床面積よりも天井の高さに強く反応することが、研究で示されています。
1|考え方が変わる ── カテドラル効果
大聖堂の中に入ると、なぜか大きなことを考えたくなる。
これは気のせいではありません。環境心理学では「カテドラル効果(Cathedral Effect)」と呼ばれる現象として研究されています。

この名前が定着したのは、2007年にミネソタ大学のJoan Meyers-Levyとブリティッシュコロンビア大学のRui Zhuが『Journal of Consumer Research』に発表した論文です。
彼女たちは3つの実験を行い、次のことを示しました。
天井の高い部屋(約3.0m)にいる人は、「自由」という概念が無意識に活性化される
天井の低い部屋(約2.4m)にいる人は、「閉じ込め」という概念が活性化される
その結果、高い天井の下では物事のつながりを見る、抽象的な思考が優位になる
低い天井の下では個々の細部に注目する、具体的な思考が優位になる
Meyers-Levyは、こう説明しています。約3mの天井の下では人はより自由に、より抽象的に考える傾向があり、約2.4mの天井の下では具体的な細部に注目しやすくなる、と。
出典:Meyers-Levy, J., & Zhu, R. (2007). The Influence of Ceiling Height: The Effect of Priming on the Type of Processing That People Use. Journal of Consumer Research, 34(2), 174–186. https://doi.org/10.1086/519146
暮らしに引き寄せると、こういうことです。
リビングで家族と話す。将来のことを考える。子どもが何かを思いつく。 そうした「広く考える」ための時間を、家のいちばん大きな部屋で過ごしている。
その部屋の天井が2.4mなのか4mなのかで、思考の傾向そのものが変わる可能性がある——研究が示しているのはそういうことです。
なお、この効果には条件があります。天井の高さに気づいていることです。 高さが意識に上らないほど自然な場合、効果は現れません。4mという高さは、入った瞬間に必ず気づきます。
2|ストレス反応が下がる ── コルチゾールの実験
こちらはもっと直接的な、体の反応の話です。
デンマークのオールボー大学のLars Brorson Fichらの研究チームは、2014年に『Physiology & Behavior』誌でこんな実験を報告しています。
被験者に、強いストレスがかかる課題(人前でのスピーチと暗算)をやってもらう。 このとき、部屋の形だけを変えます。
閉じた部屋(開口部がない)
開かれた部屋(外に抜ける開口部がある)
課題の内容も、周囲の人も、まったく同じです。違うのは空間の形だけ。結果はこうでした。
閉じた空間にいた人たちは、唾液中のコルチゾール(ストレスホルモン)が73%上昇し、心拍数も15.3%上がりました。そして、ストレスが収まるまでの回復も遅くなりました。
開かれた空間にいた人たちより、明らかに強く、長くストレス反応が出たということです。
出典:Fich, L. B., Jönsson, P., Kirkegaard, P. H., Wallergård, M., Garde, A. H., & Hansen, Å. (2014). Can architectural design alter the physiological reaction to psychosocial stress? A virtual TSST experiment. Physiology & Behavior, 135, 91–97. https://doi.org/10.1016/j.physbeh.2014.05.034
空間の閉じ具合は、気分の問題ではなく、ホルモンの数値として出る。
これが、この実験の意味です。
家は、一日でいちばん長くいる場所です。 そこが閉じているか開かれているかが、体のストレス反応に日々影響しているとすれば、無視できる話ではありません。
3|「ここに居たい」と感じる ── 脳が反応している
3つ目は、なぜホテルのロビーや美術館で長居したくなるのか、という話です。
Oshin Vartanianらの国際研究チームは、2015年に『Journal of Environmental Psychology』誌で、fMRI(機能的MRI)を使った実験を報告しています。
被験者に200枚の室内空間の写真を見せ、脳の反応を測定しました。写真は天井の高さと開放度で4パターンに分けられています。
わかったことは3つです。
天井の高い部屋ほど、「美しい」と判断された。 そのとき、視空間の探索と注意に関わる脳の領域(背側経路の構造)が活性化していました。目が空間を探索したくなる、という状態です。
開かれた部屋ほど「美しい」と判断され、そこに入りたいと選ばれた。
閉じた部屋は、そこから「出たい」という判断を引き起こした。 このとき活性化していたのは前部中帯状皮質という、恐れに関わるストレス反応の領域でした。
出典:Vartanian, O., Navarrete, G., Chatterjee, A., Fich, L. B., Gonzalez-Mora, J. L., Leder, H., Modroño, C., Nadal, M., Rostrup, N., & Skov, M. (2015). Architectural design and the brain: Effects of ceiling height and perceived enclosure on beauty judgments and approach-avoidance decisions. Journal of Environmental Psychology, 41, 10–18. https://doi.org/10.1016/j.jenvp.2014.11.006
ホテルのロビーで、なんとなく座っていたくなる。 美術館で、疲れているのに歩き続けられる。
あれは内装が豪華だからだけではありません。天井が高く、視線が抜けているから、脳が「ここに居てよい」と判断しているのです。
その状態を、毎日帰る家でつくれるとしたら。それがこの記事の主題です。
4|空気が動く、温度のムラが減る
心理の話が続いたので、物理の話もひとつ。
暖かい空気は上に行きます。天井が2.4mの部屋では、その暖かい空気の逃げ場が狭い。 夏、冷房をつけても頭のあたりだけ暑い、という経験は多くの方にあると思います。
天井が4mあると、熱が上に逃げる余地が生まれます。 人が生活している高さ(床から1.5mくらいまで)の温度が、安定しやすくなります。
体積が1.6倍あるということは、同じ量の化学物質が出ても、濃度は薄まるということでもあります。室内空気質の観点からも、天井の高さは効いてきます。
5|光と、視線の抜け
高い位置に窓を取れます。
天井が2.4mの家では、窓の上端はせいぜい2.2m程度です。 天井が4mあれば、その上の空間にもう一段、窓を設けられます。
高い位置から入る光は、部屋の奥まで届きます。 南からの直射だけに頼らず、複数の方向から光を入れられるので、一日を通じて明るさが変わりにくくなります。
そして、視線が抜けます。 座っていても、上に大きな空間がある。視線が壁で止まらないというのは、実際に体験すると想像以上に効きます。
では、なぜ普通の家には天井があるのか
ここが本題です。
天井板は、装飾のために張られているわけではありません。 天井の上に断熱材を置くために張られています。
真夏、屋根の表面温度は 70℃を超えます。 その熱が屋根裏にこもり、室内に降りてくる。だから天井の上に断熱材を敷いて、熱を止めているのです。
つまり——天井をなくすということは、この熱と正面から向き合うということです。
天井を取り払えば開放感は生まれます。しかしそのままでは、夏に住めない家になります。 「勾配天井は暑い」と言われるのは、このためです。
コージーベースが天井をなくせた理由
私たちは、この問題を3段構えで解いています。
1|遮熱(アルミで家全体を包む)
熱の伝わり方には、伝導・対流・放射(輻射)の3つがあります。 このうち、熱くなった屋根から室内へ降りてくる熱の主役は放射熱です。
放射熱は、断熱材ではなく反射で止めるのが理にかなっています。 アルミは放射熱をほとんど吸収せず、反射します。家全体をアルミで包むことで、屋根からの放射熱を跳ね返しています。
2|空冷(熱を溜めずに逃がす)
反射しきれずに残った熱は、空気の層を通して外へ抜けます。 屋根の下に通気層を設け、熱くなった空気を上昇気流で排出する。熱を溜めないという考え方です。
先日の記事で書いたとおり、化学物質の放出量は温度とともに増えます。 夜になっても蓄熱した熱が抜けない家では、放出が続きます。空冷は、開放感のためだけでなく空気質のための仕組みでもあります。
3|断熱(最後に残った分を止める)
遮熱と空冷を通り抜けたわずかな熱を、最後に断熱材で止めます。
この考え方を積み重ねて、屋根を9層構造にしています。 すべては公開していませんが、主な層は次のとおりです。
層 | 役割 |
アルミ遮熱層 | 屋根からの放射熱を反射して跳ね返す |
通気層 | 跳ね返した熱を上昇気流で屋外へ排出する |
静止空気層 | 動かない空気そのものを断熱材として使う |
防水層(3重) | 屋根の下で、雨水を三段構えで止める |
断熱層 | 通り抜けてきたわずかな熱を、最後に止める |
調湿層 | 室内側の湿度を吸放湿で調整する |
並べて読むと、設計の意図が見えると思います。
熱は、まず跳ね返す。跳ね返しきれない分は、溜めずに逃がす。それでも残った分だけを、断熱材で止める。
一般的な家は、3番目——断熱材で止めること——だけで熱と戦っています。 天井板は、その断熱材を置くために必要な部品です。
私たちは1番目と2番目で熱の大半を処理しています。だから『天井板を張らなくても室内の温度が保てる。』だから、『その結果として、すべての部屋に天井がありません。』
防水層が3重である理由にも触れておきます。屋根の表面材そのものを含めれば、雨水を止める層は4つ重なっています。
天井をなくすと、天井裏という「隠れた緩衝地帯」がなくなります。だから雨仕舞いの失敗は許されません。天井をなくすという判断は、防水の設計にも責任を課します。
最後の調湿層は、温度ではなく湿度のための層です。私たちが空気の質を、温度・湿度・化学物質の3つで考えているためです。

開放感が先にあったのではなく、屋根の熱を解いた結果として、家を狭く感じさせる天井が要らなくなりました。創業以来、すべての家で天井をなくせる家を実現しています。
この仕組みは、ただ単に家にアルミで包めば良いというものではありません。この方法を実現したのは、物理的な要素と、素材の要素、施工ノウハウの要素が組み合わされています。したがって、他社でおこなったアルミ遮熱による雨漏りの相談は一切受け付けていません。
正直に書きます|天井は高ければ高いほど良い、という話ではありません
ここまで良いことを並べてきたので、反対側も書きます。
研究上の留保
1978年、John Baird、Bernice Cassidy、Jennifer Kurrの研究では、人が最も好む天井高は3.0m前後で、それより高くても低くても好みは下がる、という結果が出ています。「高ければ高いほど良い」という単純な関係ではありません。
私たちの家の平均天井高が3mであることは、偶然ではありません。
リビングの最高部は4.2mまで上がる家もありますが、家全体をならすと約3mに落ち着く。この設計は、上に伸ばせるだけ伸ばした結果ではなく、高い場所と低い場所を意図的に配分した結果です。
また、上に挙げたMeyers-Levyらの研究が示しているのは「高い天井が優れている」ということではなく、思考の種類が変わるということです。細部に集中する作業には、むしろ低めの天井のほうが向いている可能性があります。
だから私たちは、家中すべてを同じ高さにはしません。 広く考えたい場所は高く。集中したい場所、こもりたい場所には、意図的に低い部分を残します。勾配天井は、その配分ができる形です。
実務上のデメリット
冷暖房の設計が難しくなります。 体積が1.6倍なので、断熱性能だけではなく遮熱や、気流の設計を考える必要があります。
ビニールクロスだと汚れを呼びます。 ビニールクロスは静電気があるので汚れが付き高い場所では掃除が困難です。私たちは白くなり続ける『本漆喰の白華現象』を活かしています。
高窓を付けると掃除に手が届きません。 一般住住宅の吹き抜けも同じですが、窓の掃除が困難な高窓は避けるべきです。
コストが上がります。 壁の面積が増える分、コストも高くなります。
〔内部リンク:自然素材の家のデメリット7つ〕
この写真では、絶対にわかりません
最後に、いちばん大事なことを書きます。
天井の高さは、写真で伝わりません。

広角レンズで撮れば、2.4mの部屋も広く写ります。逆に4mの空間を撮っても、平面の写真では高さの情報がほとんど失われます。
上に引用した研究が扱っているのは、いずれもその空間の中に身を置いたときの反応です。 Fichらの実験も、Vartanianらの実験も、被験者は「体験」しています。
だから、確かめる方法はひとつしかありません。
実際に立ってみること、泊まってみることです。
私たちが宿泊での体感をおすすめしているのは、空気の匂いを確かめていただくためだけではありません。4mの天井の下で一晩過ごしたとき、自分の体がどう反応するか——それは、その場に居ないとわからないからです。
15分の見学では足りません。座って、天井を見上げて、しばらく黙っていられる時間が要ります。
参考文献
Meyers-Levy, J., & Zhu, R. (2007). The Influence of Ceiling Height: The Effect of Priming on the Type of Processing That People Use. Journal of Consumer Research, 34(2), 174–186. https://doi.org/10.1086/519146
Fich, L. B., Jönsson, P., Kirkegaard, P. H., Wallergård, M., Garde, A. H., & Hansen, Å. (2014). Can architectural design alter the physiological reaction to psychosocial stress? A virtual TSST experiment. Physiology & Behavior, 135, 91–97. https://doi.org/10.1016/j.physbeh.2014.05.034
Vartanian, O., Navarrete, G., Chatterjee, A., Fich, L. B., Gonzalez-Mora, J. L., Leder, H., Modroño, C., Nadal, M., Rostrup, N., & Skov, M. (2015). Architectural design and the brain: Effects of ceiling height and perceived enclosure on beauty judgments and approach-avoidance decisions. Journal of Environmental Psychology, 41, 10–18. https://doi.org/10.1016/j.jenvp.2014.11.006
Baird, J. C., Cassidy, B., & Kurr, J. (1978). Room preference as a function of architectural features and user activities. Journal of Applied Psychology, 63(6), 719–727.
コージーベースは、松山市で自然素材の家をつくっている工務店です。天井高について詳しく聞きたいことがあれば、お気軽にお尋ねください。他社で検討中の方でも構いません。
コージーベースは、高気密・高断熱が標準化された住宅において天井高が高いという単純な捉え方をしていません。人という生物が安全に暮らしていける住環境とセットで取り扱う必要があります。
〔参考記事:子どもの不調と、住宅の化学物質 ― 9月問題〕
家づくり勉強会(体感プログラム):https://www.cozybase.jp/taikan-program
≪記事執筆者≫
コージーベース株式会社
代表取締役 松本 好司(まつもと こうじ)
出身: 松山市生まれ
富士通在職中: 26年間で28回の経営表彰(社長表彰含む)
広島県庁: 特別職 経営企画アドバイザー
公立大学: 経営大学院(MBA)新設に携わる
国の研究機関: プロジェクトマネジメントアドバイザー
建築学科を持つ学校法人: 顧問・専門委員を経験
保育事業: 科学的知見をもとに、健康で安心な保育園設置のアドバイザーを歴任
現在は、これまでのすべての経験を集約し「人生の質を高める住まい」をテーマに活動。
子どもたちの未来と家族の健康を守るため、生まれ故郷である松山・愛媛にて、自然素材を活用した本物の健康住宅の設計・普及に全力を注いでいます。



