アトピー・ぜん息・アレルギーの家づくり|愛媛県

カテゴリー:子育てと住環境
![[徹底解説] アトピー・ぜん息・アレルギーの家づくり](https://static.wixstatic.com/media/53250e_edcfc782a8b04e18a7404564d2dc5212~mv2.jpg/v1/fill/w_980,h_551,al_c,q_85,usm_0.66_1.00_0.01,enc_avif,quality_auto/53250e_edcfc782a8b04e18a7404564d2dc5212~mv2.jpg)
アトピー・ぜん息・アレルギーの家づくり|愛媛県
先に、いちばん大切なことを書きます。
家は、アトピーやぜん息を治すものではありません。
私たちは工務店であって、医療機関ではありません。治療については、必ず専門の医師にご相談ください。
そのうえで、住まいの側からできることが一つだけあります。
症状を引き起こす、または悪化させると報告されているものに、触れる量を減らすこと。
医学では「暴露量を減らす」と言います。治すのではなく、原因から遠ざける。それだけです。
ただ、この「それだけ」には、国際的な研究の裏づけがあります。
この記事では、世界保健機関(WHO)の指針と、査読を経た研究が何を示しているかをご紹介します。 そして、今のお住まいで今日からできることを最後にまとめました。
これから家を建てる方だけでなく、すでにお住まいの方にも役立つ内容にしています。
1|湿気とカビ|WHOが「十分な証拠がある」とした領域
住環境と呼吸器の健康について、世界保健機関(WHO)は2009年に専門の指針を出しています。
『WHO Guidelines for Indoor Air Quality: Dampness and Mould(室内空気質指針:湿気とカビ)』です。
この指針で、WHOは疫学的証拠を評価し、次の健康影響について**「十分な証拠がある(sufficient evidence of an association)」と結論づけました。
呼吸器症状(湿気やカビのある建物の居住者は、呼吸器症状のリスクが高い)
呼吸器感染症
ぜん息の悪化
さらに、アレルギー性鼻炎とぜん息についても、リスク上昇を示唆する証拠があるとしています。
そのうえで、WHOはこう勧告しています。
建物の内部表面および構造内における持続的な湿気と微生物の増殖は、回避または最小化されるべきである。
ここが重要です
WHOは同時に、「許容できる汚染レベルについて、健康に基づく定量的な指針値や閾値は勧告できない」と明記しています。
つまり、「ここまでなら安全」という線は引けない。 だから量を減らすしかない、という立場です。
どれくらいの家に湿気があるのか
WHOの推計では、欧州・北米・オーストラリア・インド、そして日本において、室内環境の10〜50%に湿気の問題があるとされています。河川流域や沿岸部では、この比率がさらに高くなります。
松山は、瀬戸内海に面した平野部です。
数値で見ると
米ローレンス・バークレー国立研究所のFiskらは、2007年に『Indoor Air』誌で、住宅の湿気・カビと呼吸器の健康に関する研究を統合したメタ分析を発表しています。
結論は、こうです。
建物の湿気とカビは、さまざまな呼吸器およびぜん息関連の健康アウトカムの、約30%から80%の増加と関連している。
わかりやすく言い換えると、こうなります。
湿気やカビのある家に住む人は、そうでない家に住む人と比べて、 せきやぜん鳴といった症状が起きる割合が、1.3倍から1.8倍ほど高い。
症状の種類によっては、2倍を超えるものもありました。
そして、28通りの解析のうち26通りが、「たまたまそう出ただけとは考えにくい」という結果になっています。
〈原文の数値:オッズ比 1.32〜2.10、95%信頼区間の下限が1.2を超えるものが大半〉
この記事に出てくる数字の読み方
ここは読み飛ばしていただいて構いません。 数字の意味を確かめたい方だけ、お読みください。
医学や環境の研究では、「あるものに触れた人と、触れていない人で、どれだけ違うか」をオッズ比という数字で表します。
数字 | 意味 |
1.0 | 差がない |
1.2 | 約20%起きやすい |
1.5 | 約1.5倍起きやすい |
2.0 | 約2倍起きやすい |
そして、その数字には必ず95%信頼区間という「幅」が付きます。 「本当の値は、だいたいこの範囲にあるだろう」という推定の幅です。
この幅の中に1.0が入っていなければ、「偶然ではなさそうだ」と判断されます。 逆に1.0をまたいでいれば、「差があるとは言い切れない」ことになります。
この記事では、読みやすさのために本文では倍率で書き、原文の数値は〈 〉内に添えています。論文はすべて末尾に記載していますので、ご自身で確認していただけます。
2|ホルムアルデヒドと、ぜん息
もう一つ、証拠が積み上がっている領域があります。
国際がん研究機関の評価
まず、前提となる事実から書きます。
世界保健機関の外部組織である**国際がん研究機関(IARC)は、2012年の評価(Monographs Volume 100F)で、ホルムアルデヒドをグループ1(ヒトに対して発がん性がある)**に分類しています。
評価文は、こうです。
ホルムアルデヒドのヒトに対する発がん性について、十分な証拠がある。 ホルムアルデヒドは、上咽頭がんおよび白血病を引き起こす。
ただし、これは主に高濃度の職業暴露に基づく評価です。一般家庭の濃度で同じことが起きるという意味ではありません。 そこは正確に区別してください。
子どものぜん息について
カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者らは、2021年に『PLOS ONE』誌で、ホルムアルデヒドとぜん息に関する系統的レビューとメタ分析を発表しました。
子どものぜん息診断について、9件の研究・9,049人を統合した結果です。
室内のホルムアルデヒド濃度が10μg/m³上がるごとに、 子どもがぜん息と診断される割合が、約20%高くなる。
〈原文の数値:オッズ比 1.20、95%信頼区間 1.02–1.41〉
著者らは、ホルムアルデヒドとぜん息の関連について、「毒性の十分な証拠がある(sufficient evidence of toxicity)」と評価しています。
この「10μg/m³」という数字を、覚えておいてください。
次の章で、意味が変わります。
WHOの指針値
WHOは2010年の『室内空気質指針:選定された汚染物質』で、ホルムアルデヒドの指針値を定めています。
0.1 mg/m³(=100 μg/m³)、30分平均
この値は、まばたき反応と結膜充血という感覚刺激を根拠に設定されました。無毒性量0.6 mg/m³を、不確実係数5で除した値です。
WHOは「この短期指針値を用いることで、がんを含む長期的な健康影響も予防される」としています。
日本の厚生労働省の室内濃度指針値も、同じ100 μg/m³(0.08 ppm)です。
3|F☆☆☆☆は、ホルムアルデヒド〝ゼロ〟ではない
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
家づくりを調べていると、必ずこの表示を見ます。
F☆☆☆☆(エフ・フォースター)
「最高等級です」「これなら安心です」と説明されることが多い表示です。
ですが、F☆☆☆☆は「ホルムアルデヒドを含まない」という意味ではありません。
F☆☆☆☆の実際の数値
F☆☆☆☆は、JAS(日本農林規格)・JIS(日本産業規格)に基づく放散量の等級です。
デシケーター法という試験で測定した値が、次の範囲に収まることを示します。
等級 | 平均値 | 最大値 |
F☆☆☆☆ | 0.3 mg/L 以下 | 0.4 mg/L 以下 |
F☆☆☆ | 0.5 mg/L 以下 | 0.7 mg/L 以下 |
F☆☆ | 1.5 mg/L 以下 | 2.1 mg/L 以下 |
ゼロではありません。0.3という数字が書かれています。
建築基準法の側では、放散速度で区分されています。
区分 | 放散速度 | Fマーク | 使用面積の制限 |
第2種 | 0.02 超 〜 0.12 mg/m²h | F☆☆ | あり |
第3種 | 0.005 超 〜 0.02 mg/m²h | F☆☆☆ | あり |
規制対象外 | 0.005 mg/m²h 以下 | F☆☆☆☆ | なし |
F☆☆☆☆とは、「1時間あたり1平方メートルから0.005ミリグラムまでなら放散してよい」という等級です。
「出ない」ではなく、「ここまでなら出てよい」という上限値です。
「使用面積の制限なし」の意味
上の表で、いちばん重要なのは右の列です。
F☆☆とF☆☆☆には、使用できる面積の上限があります。部屋の広さに応じて、これだけまでしか使えない、という計算をします。
F☆☆☆☆には、その制限がありません。
つまり——何平方メートル使っても、法律上は問題ありません。
床も、壁も、天井も、建具も、収納の中も、すべてF☆☆☆☆の建材で埋め尽くすことができます。それは完全に適法です。
では、全部F☆☆☆☆にしたら、室内濃度はどうなるのか
ここで、簡単な計算をしてみます。
8畳の子ども部屋を想定します。
床面積 約13 m²、天井高 2.4 m → 容積 約31 m³
内装の表面積(床・天井・壁)→ 約50 m²
法定の換気回数 0.5回/時 → 換気量 約15.6 m³/h
内装材がすべてF☆☆☆☆で、上限いっぱいの0.005 mg/m²hで放散した場合——
放散量 = 50 m² × 0.005 mg/m²h = 0.25 mg/h
定常濃度 = 0.25 mg/h ÷ 15.6 m³/h = 約 0.016 mg/m³
= 約 16 μg/m³約16 μg/m³。
WHOの指針値100 μg/m³は、大きく下回っています。法律上も、指針値上も、何の問題もありません。
ただ、約16 μg/m³だと影響がないのか? これについて前の章の数字を思い出してください。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者らのメタ分析が扱っていたのは、ホルムアルデヒド濃度が僅か10 μg/m³上がる毎に子供がぜん息と診断される割合は20%高くなるという結果です。約16 μg/m³だとぜん息と診断される割合は32%高くなることを意味します。
この計算について、正直に書きます
上の計算は、制度が許容している上限で試算したものです。
次の点を必ずご理解ください。
1|実際の製品の多くは、上限より低い値です
F☆☆☆☆の認定を受けた製品が、常に0.005 mg/m²hを出しているわけではありません。多くはそれより低い値です。
2|単純化した定常計算です 実際の濃度は、温度・湿度・家具・生活行為・換気の実態によって変動します。
3|2003年の規制には、確かな効果がありました
建築基準法のシックハウス規制が導入されて以降、新築住宅の室内ホルムアルデヒド濃度は大きく下がっています。規制は機能しました。
私たちが申し上げたいのは「規制が無意味だ」ということではありません。
「F☆☆☆☆=ゼロ」という理解が、事実と違うということです。
すなわち、ぜん息リスクがゼロではないということです。
温度が上がると、放散量は増えます
もう一つ、見落とされやすい点があります。
上の試験値は、一定の温度条件(標準は28℃)で測定した値です。
ホルムアルデヒドの放散量は、温度が上がると増えます。
真夏、屋根の表面温度は70℃を超えます(当社が松山市内で計測した実測値です)。その熱が天井裏にこもり、室温と建材温度が上がる。同じ建材でも、夏の午後と冬の朝では、出てくる量が違います。
夜になっても、蓄えられた熱が抜けなければ、放散は続きます。
〔参考記事:子どもの不調と、住宅の化学物質 ― 9月問題〕
さらに、建築基準法が規制しているのは建築材料です。
家具と生活用品は、規制の対象外です
家具
カーテン
カーペット
収納ケース
学習机
これらは規制の対象に入っていません。
新築の家に新しい家具を入れる。子ども部屋に学習机を買う。そのとき、F☆☆☆☆の表示を確認する人はほとんどいません。
4|海外の基準と、比べてみます
日本だけが緩いのか。それとも、これは世界共通の構造なのか。
アメリカ
米国環境保護庁(EPA)は、TSCA第6編(Title VI)で、複合木材製品のホルムアルデヒド放散基準を定めています。カリフォルニア州のCARB Phase 2と同じ水準です。
2017年12月12日以降に製造された製品に適用されています。
製品 | 基準値 |
合板(ハードウッド) | 0.05 ppm |
パーティクルボード | 0.09 ppm |
MDF(中密度繊維板) | 0.11 ppm |
薄型MDF | 0.13 ppm |
試験法はASTM E1333(大形チャンバー法)です。
注意していただきたい点があります。
日本のデシケーター法(mg/L)と、米国のチャンバー法(ppm)は、測定原理が異なるため、数値を直接比較することはできません。
「日本のほうが緩い」「アメリカのほうが厳しい」と単純に言うことはできません。そう書いている記事を見かけたら、注意してください。
フランス
フランスでは、2012年1月1日以降、室内で使用する建材・内装材は、揮発性物質の放散量を表示しなければ販売できません。
A+(放散が非常に少ない)からC(多い)までの4段階で、ISO 16000に基づく28日間の試験結果に応じて等級が付きます。
消費者は、店頭でラベルを見て比べることができます。
共通しているのは、ここです
国によって、対象物質も試験法も基準値も違います。
ただ、共通している構造が一つあります。
どの国の制度も、「1つの建材あたり」の放散量を規制しています。 「その家の室内に、最終的に何がどれだけあるか」は、規制していません。
材料を一つずつ見れば、すべて基準内。 しかし、それを合計した空気について、誰も責任を負っていない。
これは日本固有の問題ではなく、制度設計そのものの構造です。
5|規制の範囲を、数字で見てみます
ここまでをまとめると、こうなります。
対象の数 | |
建築基準法のシックハウス規制 | 2物質 (ホルムアルデヒド、クロルピリホス) |
厚生労働省の室内濃度指針値 | 13物質 |
世界で流通している工業用化学物質 | 約35万種類 |
建築基準法が規制している化学物質は、2つだけです。
クロルピリホスは発がん性が強いので使用禁止になりました。
ホルムアルデヒドはF☆☆☆☆マークで使用量規制をしました。
厚生労働省の指針値がある物質は13。 そのうち1物質の放散量の指針に対応しているのがF☆☆☆☆マークのみです。
工業用化学物質は約35万種類。20年で3倍になりました
スイス連邦水科学技術研究所のWangらは、2020年に『Environmental Science & Technology』誌で、世界各国の化学物質インベントリを初めて包括的に分析した結果を発表しました。
世界で生産・流通のために登録されている工業用化学物質は、約35万種類。 これは20年前の約10万種類と比べて、3倍を超える。
さらに、この論文はもう一つ重要なことを指摘しています。
登録された化学物質の約3分の1は、公開された情報が不十分である。
内訳は、成分が開示されていない混合物・ポリマーが約7万件、そして企業秘密(confidential business information)として物質の identity が保護されているものが約5万件です。
約5万種類については、何が使われているのかを公開情報から知ることができません。
参考までに、学術データベースであるCAS登録簿には現在2億9,000万種類を超える物質が収載されており、毎日、数千の新規物質が追加され続けています。
「規制されたら、別の物質に置き換える」
この構造には、名前がついています。
Regrettable substitution(遺憾な代替)です。
ある物質に有害性が判明し、規制される。メーカーは化学構造をわずかに変えた別の物質に置き換える。その新しい物質は規制の対象に入っていないため使用できる。しかし、有害性の評価はまだ行われていない——というサイクルです。
実際に起きた例があります。
カリフォルニア大学バークレー校の研究者らは、2019年に『Environmental Science & Technology Letters』誌で、難燃剤の置き換えを検証しました。
有害性が判明して段階的に使用が中止された臭素系難燃剤(PBDE)は、リン酸エステル系難燃剤(OPFR)に置き換えられました。
その結果がこうです。
置き換えた物質(OPFR)への暴露は、人体および屋内外の環境において普遍的に見られ、 現在では置き換え前の物質(PBDE)のピーク時の暴露レベルと比べて、しばしばより高い濃度で検出されている。
著者らは、これを「遺憾な代替」にあたる可能性があると結論づけています。
規制が新しい物質に追いつくより、新しい物質が生まれるほうが速い。
これが構造的な問題です。
もう一度書きます。これは違法な家の話ではありません
2物質の規制を守り、F☆☆☆☆の建材を使う。
それは完全に適法で、まったく問題のない家づくりです。
ほとんどの住宅会社が、誠実にそれを行っています。
ただ、建築基準法は2物質の法規制だけに留まり、厚生労働省は13物質の指針値を示しただけ、工業用化学物質は35万あるが未検証。
これら3つの数字が並べると、現実との乖離を示す数字になります。
6|では、どうすればいいのか
未知の物質を一つずつ検証することは、誰にもできません。
残る方法は、ひとつだけです。
化学物質を使う住宅建材の種類を、できるだけ減らすこと。
材料が100種類あれば、把握できない成分の入り口が100か所あります。材料が10種類なら、10か所です。
ひとつの例で具体的な例で示すと
✓フローリング材について、幾つの化学物質が使われているのか?
✓使われている化学物質の成分をすべて示してください。
✓表面に塗るワックスの成分をすべての化学物質で示せるのか?
様々なフローリング材があるなかで、ここまで把握して建材を選ぶことは現実的に不可能なのです。
成分表を読んで安全なものを選ぶことは不可能で、読まなければならない成分表の数そのものを減らす。そのためにワックスすら使わない!と選択しました。
これが、私たちが取っている方針です。
次の2つの章で、実際に使っている材料を書きます。
住む人が接するのは、
音響熟成®された飫肥杉(オビ杉)の木材と、幻の漆喰®。 基本的にはこの2つだけです。
7|床・天井・構造材|飫肥杉(オビスギ)
コージーベースの家で使う木は、構造材から、天井、床、棚板、建具に至るまで、すべて音響熟成された飫肥杉(オビスギ)です。
宮崎県の飫肥地方で、約400年にわたって育てられてきた杉です。林業としての歴史は1623年にさかのぼります。
なぜ飫肥杉なのか
飫肥杉には、はっきりした特徴があります。
樹脂(油分)を多く含みます。
音響熟成で乾燥させることで木材の油脂成分の残して、ワックスなしの床を実現しました。
樹脂(油分)を多く含むため、飫肥杉は江戸時代から「弁甲材」として、船の材料に使われてきました。 1853年には山口県との取引が始まり、造船用材として全国に知られるようになります。
海水に浸かり続ける船に使われたということは、湿気に強く、腐りにくいという実績があるということです。また、心材はシロアリの被害を受けにくいとされています。音響熟成®木材の杉風呂としても利用しています。
曲げに強く、裂けにくく、折れにくい。衝撃や揺れにも強い。
構造材として使える木です。
木の成分とダニについて、正確に書きます
ここは慎重に書く必要があります。
杉の成分に、ダニに対する作用があることを示す研究はあります。
2015年、『Journal of Wood Science』誌で、杉(Cryptomeria japonica)から抽出した成分の殺ダニ活性を報告しています。ent-カウレンという成分に、最も強い活性が見られました。
ただし、この研究について正確にお伝えしなければならないことが3つあります。
1|対象はハダニです
試験されたのは Tetranychus 属のハダニ(農業害虫)であって、アレルギーの原因となるヒョウヒダニ(Dermatophagoides)ではありません。
2|葉から抽出した精油です 活性が見られたのは、葉から溶媒抽出した成分です。建材として使う心材とは異なります。
3|試験管内の実験です 一定濃度の精油に直接さらした場合の結果であり、木材を家に使った場合に同じ効果が出るという証明ではありません。
したがって、「飫肥杉の家はダニを防ぐ」とは言えません。 家ダニを防ぐとまでは申し上げません。
私たちが言えること
飫肥杉について、私たちが根拠をもって言えるのは、次の一点だけです。
接着剤も、防腐剤も、防蟻剤も、一切添加していません。
合板やフローリング材は、薄い木の板を接着剤で貼り合わせてつくられます。その接着剤には化学物質が使われます。F☆☆☆☆の合板も、接着剤を使っていることに変わりはありません。 放散量が基準以下だ、という等級です。
音響熟成®木材の飫肥杉の床のフローリング材や天井材には、そもそも合板材も使用しません。接着剤も存在しません。
F☆☆☆☆マークの等級のマークがないのは、存在しないものは、出てこないという話です。
そして、構造材から建具まで同じ木を使うということは、使用する材料の種類が劇的に少ないということです。
前の章で書いたとおり、約35万種類の化学物質が流通し、うち約5万種類は成分が非公開です。この状況で確実な方法は、成分表を読むことではなく、読まなければならない材料の数を減らすことです。
音響熟成®木材の飫肥杉で統一しているのは、そのためです。
湿度について
木には、空気が乾けば水分を放ち、湿れば吸う性質があります。厚みがあるほど、その容量は大きくなります。
私たちは、38mmの飫肥杉を天井面と床の両方に使っています。一般的な住宅の内装材が12〜15mm程度であることを考えると、2倍以上の厚みです。
機械ではなく、材料そのものに湿度を調整させる考え方です。
正直に書きます。
冬、エアコンの暖房を入れた状態で、加湿器なしの室内湿度は30%前後です。
これは一般に推奨される40〜60%を下回っています。
理想的な数値ではありません。
比較のために書くと、冬の一般的な住宅では、家庭用の湿度計が「LOW」と表示して測定できなくなることがあります。 多くの湿度計製品の下限は20%です。
私たちが言えるのは、暖房下で加湿器なしにこの水準を保てるという点までです。より高い湿度を望まれる場合は、加湿器を併用してください。
8|壁は幻の漆喰®
床・天井・構造材・建具が飫肥杉。
そして壁が、幻の漆喰です。
つまり私たちの家は、基本的に木と漆喰という2つの材料でできています。
前の章で書いた「材料の種類を減らす」という方針は、ここまで徹底して初めて意味を持ちます。
何でできているか
有明海の貝殻を原料とする漆喰です。接着剤や硬化剤を一切使用していない完全自然素材としています。 貝殻の主成分は炭酸カルシウムです。これを焼いて生石灰にし、水を加えて消石灰(水酸化カルシウム)にする。日本で千年以上使われてきた、伝統的な壁材と同じ原理です。
漆喰には本物の漆喰と、ボンド系などの添加物か入った漆喰とがあります。本漆喰を扱える住宅会社が少ないことから、聞き漏らさないようにして選ばないと、ボンド系が入った漆喰を選ぶことになります。
本漆喰の強いアルカリ性が、カビを抑えます
この記事で最も重要な第1章を思い出してください。
WHOが「十分な証拠がある」と結論づけたのは、湿気とカビでした。呼吸器症状、呼吸器感染症、ぜん息の悪化。住環境と健康の関係で、最も確かな証拠があるのがこの領域です。
漆喰については、ここに査読を経た研究があります。
坪井らは2024年、日本の学術誌『室内環境』で、内装用の薄塗り漆喰の防カビ性能を報告しました。
試験に使われたのは Aspergillus niger(クロカビ)と Cladosporium sphaerospermum(クラドスポリウム)という、室内で一般的なカビです。
結論は、こうです。
薄塗りであっても高いアルカリ性を保持し、強い防カビ性を発揮した。 消石灰を30%以上含む配合が、最も効果的にカビの発生を抑制した。
著者らは、漆喰を「本質的な防カビ性を備えた、きわめて有効な壁材」と評価しています。
カビは、強いアルカリ性の環境では育ちにくい。薬剤で殺すのではなく、育ちにくい環境であること自体が材料の性質という点が、この材料の本質です。
防カビ剤を添加する必要がありません。添加していないものは、出てきません。
調湿について
もう一つ、湿気に関わる性質があります。
ロンドン大学のParalkarとDamleは2024年、『UCL Open Environment』誌で、漆喰(石灰系)の調湿性能を検証しました。
石灰系のモルタルは、セメント系と比べて3倍の調湿容量を持つ。
天井と床の38mmの飫肥杉、そして壁の漆喰。家を囲む面のほとんどが、吸って放す材料でできていることになります。
次の章で書くとおり、ダニの生存は湿度に左右されます。機械で一方向に制御するのではなく、材料そのものに緩衝させるという考え方です。
正直に書きます|漆喰にも限界があります
良いことばかりでは信用されないので、限界も書きます。
1|呼吸を妨げると、カビは生えます
上のParalkarらの研究は、重要な但し書きを付けています。
湿気の移動が妨げられた場合には、漆喰にもカビの発生が観察された。 したがって、換気された空間で漆喰の表面が呼吸できる状態にあれば、カビの発生は回避できる。
実験では、相対湿度96%の環境で3週間後にカビが発生しています。
つまり、漆喰は万能ではありません。 上から通気性のない塗料を塗れば、性能は失われます。換気が止まっていれば、同じことが起きます。
材料だけでは決まりません。設計と、住まい方の両方が必要です。
ここまで知って、私たちのように建築士が「空気の質まで設計する」住宅会社は聞いたことがない。と思いますが、事実として空気の設計まで考慮した設計プランを行っています。
2|ひびが入ります
漆喰は乾いて固まるときに縮み、細いひびが入ります。髪の毛ほどの細さのものが、入居後1〜2年のあいだに出ます。
構造上の問題ではありませんが、「まっさらな白い壁がずっと続く」と思って建てると、必ずがっかりします。
3|高くつきます
職人が一面ずつ手で塗ります。クロスを貼るのとは作業時間が違います。乾燥を待つ時間も必要なので、工期も延びます。
ホルムアルデヒドの低減について|私たちは数字を使いません
ここは、はっきり書いておきます。
製造元は、幻の漆喰にホルムアルデヒドの低減性能があるとしています。
そして、この種の数値には構造的な問題があります。
建材のホルムアルデヒド低減性能を測る試験方法は、JIS A 1905として規定されています。ただし、この規格には2つの異なる方法(Part 1 と Part 2)があります。
2011年、『日本建築学会環境系論文集』で、この2つの試験法を比較しました結果があります。
同一の材料を両方の試験法で測定した場合、吸着フラックスの値に1.6〜3.2倍の差が生じた。
同じ材料でも、測り方を変えると数値が3倍変わります。
つまり「ホルムアルデヒドを◯%低減」という表示は、試験法と面積比とセットでなければ、比較する意味がありません。 そして多くの場合、その条件は表示されていません。
したがって、私たちはこの数値を根拠に何かを主張しません。
漆喰について私たちが根拠をもって言えるのは、次の3点だけです。
査読を経た研究で、アルカリ性による防カビ性が確認されていること
接着剤・硬化剤・防カビ剤を添加していないこと(製造元の表示による)
「吸着して分解する」という機能に期待するのではなく、そもそも入れない。 これが一貫した方針です。
創業以来、同じ仕組み同じ材料で家を建て続けて、すべての家で、ぜん息、アトピーの住宅健康被害はゼロという実績です。アレルギー体質の方や、ぜん息、アトピーの方が住んでも同じ結果が出たという事実です。
9|湿度とダニ|数字がはっきりしている領域
アレルギーの原因として最も一般的なもののひとつが、ヒョウヒダニ(house dust mite)です。
ダニには、生存に関する明確な条件があります。空気中の水分から体内の水分を得ているため、湿度が下がると生きられません。
ローレンス・バークレー国立研究所がまとめた研究レビューによれば、
相対湿度が40〜50%の範囲を下回る状態が長期間維持されると、ダニは死滅する。
Arlianらによる1999年の研究(『Journal of Allergy and Clinical Immunology』)は、相対湿度を下げることでヒョウヒダニを制御できることを実験的に示しています。逆に言えば、湿度が高いほどダニは増えます。
ここに、日本の住宅の難しさがあります
湿度は、低ければ低いほど良いわけではありません。
冬に乾燥しすぎると、のどや鼻の粘膜が乾き、別の不調につながります。
つまり夏は下げたい、冬は下げすぎたくない。 相反する要求を、一年を通して満たす必要があります。
だから、機械で一方向に排気を制御するのではなく、吸って放す材料を使っています。
10|湿気を溜めない構造
WHOが最も強い証拠を認めているのは、湿気とカビです。だから、そこに最も力を入れています。
屋根の熱を溜めない構造にしています。
真夏の屋根の表面温度は70℃を超えます。この熱が構造内にこもると、温度差から結露が生じます。
アルミで放射熱を反射し、通気層の上昇気流で熱を屋外へ排出する。熱を止めるのではなく、溜めないという考え方です。
第3章で書いたとおり、温度が上がると化学物質の放散量は増えます。 熱を溜めないことは、結露対策であると同時に、空気質の対策でもあります。
また、断熱材よりも外側にアルミを張り、外部からの湿気が壁の中に入らない構造にしています。
換気について
2003年の建築基準法改正で、住宅への24時間換気設備の設置が義務づけられました。ただ、設備があることと、その子が吸っている空気が入れ替わっていることは、別の話です。
給気口が閉じられている、排気ファンが切られている、という家は珍しくありません。第3章の計算は、換気が設計どおりに働いていることを前提にしています。止まっていれば、濃度は上がります。
正直に書きます|住まいでは解決しないこと
ここを飛ばさずに読んでいただきたいと思っています。
アレルギーの原因は、住環境だけではありません
食物、花粉、ペット、遺伝的な要因、ストレス、季節。住まいは、要因のひとつに過ぎません。家を変えても症状が変わらないことは、十分にあり得ます。
因果関係は、証明できません
上に挙げた研究が示しているのは、集団における統計的な関連です。
「この家に住んだから、この子の症状がこうなった」という個別の因果は、誰にも証明できません。私たちにもできません。
「うちで建てれば治る」と言う会社があれば、それは言ってはいけないことを言っています。
私たちにできないこと
診断はできません
治療はできません
症状が改善するという約束はできません
すでに発症している症状について、医学的な助言はできません
医療機関の受診を、住まいの相談に置き換えないでください。 順番が逆になると、必要な治療が遅れます。
建築費は高くなります
飫肥杉の無垢材も、漆喰も、一般的な建材より高くつきます。塗り壁は職人が手で塗るため、工期も費用も増えます。
無垢材には、傷がつく、季節で隙間が空くといった性質もあります。
今のお住まいで、今日できること
家を建てる予定がない方にも使っていただける内容です。 費用はかかりません。
1|給気口をすべて開ける
壁の丸い給気口を探して、すべて開いているか確認してください。閉じていたら開けてください。冬に寒いからといって閉めると化学物質濃度が上がります。
2|排気ファンのスイッチを確認する
洗面所・トイレ・浴室の天井にあるファンが、常時運転になっているか確認してください。「切」になっていたら入れてください。特に重要なことは、レンジフードのファンが2時間換気の換気計算にいれた住宅であれば、レンジフードにある24時間換気のスイッチを常時運転が必須です。
3|夏の午後、部屋を空けたあとの匂いを確かめる
温度が上がると放散量は増えます。閉め切った部屋に、夏の夕方に入った瞬間が、いちばんわかりやすいタイミングです。
4|芳香剤・消臭剤をやめてみる
家の中から芳香剤・消臭剤・置き型の香り製品をすべて片づけ、柔軟剤も無香料に変えてみてください。半年や年単位で体調に変化があるかを見てください。
「天然」「アロマ」という表示は、成分の安全性を保証するものではありません。日本では香料の個別成分に表示義務がなく、何百種類の成分が含まれていても「香料」の二文字で済みます。
5|結露とカビを探す
WHOが最も強い証拠を認めているのは、湿気とカビです。
北側の壁、窓まわり、押入れの奥、家具の裏、洗面所の床下収納。目に見えるカビがあれば、まずそこです。
6|寝室の湿度を測る
湿度計を置くようにしてください。リビングや子どもが一日でいちばん長く過ごす場所の湿度を知ってください。夏に60%を超え続けているなら、ダニにとって好ましい環境です。
7|寝具を高温で洗う
ダニのアレルゲンは、寝具に最も多く蓄積します。掃除機で吸い取るか、洗えるものは洗ってください。
住宅見学に行かれるとき、確認したいこと
どこの住宅会社の見学でも使えます。
1|「F☆☆☆☆はゼロという意味ですか」と聞く 「ゼロです」と答えたら、その会社は制度を正確に理解していません。 F☆☆☆☆は0.005 mg/m²h以下という上限値の等級です。
2|「使用する建材のリストをもらえますか」と聞く
契約前に全材料の成分を開示できるか。ここで会社の姿勢がわかります。
3|「F☆☆☆☆以外の化学物質についてはどうですか」と聞く
建築基準法が規制しているのは2物質、厚労省の指針値は13物質です。
F☆☆☆☆マークの建材を使っているから安心と言っている会社がいれば、かなりの注意が必要です。
4|「使っている材料は何種類ありますか」と聞く
この質問に意味があることは、この記事を読まれた方にはお分かりいただけると思います。自然素材の家と思って家を建てても、アトピー・ぜん息、アレルギーの人が安心して住める家とは違うケースがあります。
5|「結露対策をどう設計していますか」と聞く WHOが最も重視しているのは、湿気です。夏型結露、冬は乾燥しすぎる、日本の気候に合わせた考え方が必要です。
6|「◯%低減」という数字を見たら、試験法を聞く
建材のホルムアルデヒド低減性能には、JIS A 1905という規格に2つの試験法があります。同じ材料でも、測り方で1.6〜3.2倍の差が出ます。 試験法と面積比が示されていない数値は、他社と比較できません。
7|真夏の午後に見学する
温度が上がったときに、何が起きるか。春や秋の見学では出ません。棚の中の扉を開けると臭いで分かります。
8|短時間ではなく、長く過ごす
15分の見学では、体の反応まではわかりません。可能なら数時間、可能であれば宿泊体験をして慎重な家選びが必要です。
9|「治りますか」と聞いてみる 「治ります」と答える会社は、言ってはいけないことを言っています。家が原因であれば家を治す方法しかないですが、その結果として治ることもあります。
最後に
お子さんの症状で悩まれている方に、無責任な希望をお伝えするつもりはありません。私たちにできるのは、体内に暴露する量、触れる量を減らす設計だけです。それ以上でも、それ以下でもありません。
ただ、WHOが「十分な証拠がある」と結論づけた領域が、家の中にあります。そして、それは設計で減らせます。
まず医師にご相談ください。そのうえで、住まいの側でできることがあるかを知りたくなったら、そのときにお声がけください。
上の7つは、私たちと関わりがなくても今日からできます。そちらを先に試していただくほうが確実です。
コージーベースは、松山市で自然素材の家をつくっている工務店です。年間5棟限定。この記事の内容について詳しく聞きたいことがあれば、お気軽にお尋ねください。他社で検討中の方、これから建てる予定のない方でも構いません。
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≪記事執筆者≫
コージーベース株式会社
代表取締役 松本 好司(まつもと こうじ)
出身: 松山市生まれ
富士通在職中: 26年間で28回の経営表彰(社長表彰含む)
広島県庁: 特別職 経営企画アドバイザー
公立大学: 経営大学院(MBA)新設に携わる
国の研究機関: プロジェクトマネジメントアドバイザー
建築学科を持つ学校法人: 顧問・専門委員を経験
保育事業: 科学的知見をもとに、健康で安心な保育園設置のアドバイザーを歴任
現在は、これまでのすべての経験を集約し「人生の質を高める住まい」をテーマに活動。子どもたちの未来と家族の健康を守るため、生まれ故郷である松山・愛媛にて、自然素材を活用した本物の健康住宅の設計・普及に全力を注いでいます。
参考文献
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厚生労働省「室内空気中化学物質の室内濃度指針値について」(13物質)
日南製材事業協同組合「飫肥杉情報」(飫肥杉の特性・弁甲材の歴史)
カイケンコーポレーション株式会社「幻の漆喰」製品情報
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F☆☆☆☆ 安全なのか
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